こんにちは!前回の「ニニキネ様とコノハナサクヤヒメ(前編)」の続きのお話になります。
突如、現れた竜が燃え盛る炎の中から赤子を次々と助け出し、三つ子のお子様は無事に一命を取りとめたのでした。

この様子に気づいた付近の人々が大急ぎで火を消し、やっとのことで、アシツヒメを室屋の中から助け出しました。
そして、ヒメとお子様がたを輿に乗せてサカオリノ宮まで運び、伊勢におられるニニキネ様に大至急使いを走らせて、この一大事を伝えたのでした。
使者が街道筋に当たるシロコを通ると、アシツヒメがかつて誓いを立てて植えた桜の木が見えてきました。
桜は時季外れにも関わらず、アシツヒメが三つ子をお産みになった六月初日(現在では7月15日頃に当たる)からずっと咲き続けていたのです。
驚いた使者は一連の出来事と共に、シロコの桜のこともニニキネ様にお伝えしました。
ニニキネ様の誤解が解ける
このことを聞いたニニキネ様はたちまち誤解が解け、アシツヒメの潔白を知るのでした。居ても立ってもいられないニニキネ様は急いでカモ船(櫂がついた船)に乗り、全速力でオキツ浜(現:駿河湾興津付近)に辿り着きました。
ニニキネ様の到着はサカオリノミヤで静養していたアシツヒメの耳に届きました。しかし、ヒメは一室に閉じこもったきり、ニニキネ様に会おうとはしません。

この様子を使者から聞いたニニキネ様はじっと考え込み、ウタミ(短冊のようなもの)にありのままの心をウタにして書き留めました。
そして、このウタをオキツヒコさん(ソサノヲさんの孫にあたる)を勅使に立てて、アシツヒメに届けさせます。
一室に閉じこもっていたアシツヒメはそっとニニキネ様のウタを覗いてみます。そこにはこんなことが書かれていました。


沖つ藻=ニニキネ様を指し、浜つ千鳥=アシツヒメを例えて詠んでいます。「私が疑いを晴らして手を差し伸べているのに、ヒメはまだ心を閉ざしているのか」という意味になります。
かなり上手なウタですよね。「沖つ」はニニキネ様が到着した「オキツ浜」とかけていて、浜辺に打ち寄せる海藻をご自身に、さ寝床はアシツヒメに例えています。率直かつ純粋なウタです。

即興でここまで凝ったウタを詠めるニニキネ様は相当頭が良い方だと分かりますし、駆け引きや計算が無い、純粋で素直なお人柄も伺えますよね。
さて、話を本筋に戻します。
アシツヒメの恨みは消えて
ニニキネ様のウタを読んだアシツヒメは胸につかえていた恨みが解けて、晴々とした気持ちになりました。そして、我を忘れて裸足のまま、裾野を駆け下りてオキツ浜へ向かいます。この様子はホツマツタヱに以下のように書かれています。

ニニキネ様はたいそう喜んでアシツヒメを迎え、輿を並べてサカオリノミヤに向かいます。
そして、サカオリノミヤに着いたニニキネ様は喜びいっぱいで以下のように勅(みこと)のりをしました。

「先日、アワ海(琵琶湖)を北辺を通った際、三月だったが遅咲きの梅が見事であった。次にタカシマ(滋賀県高島郡)に差し掛かると、今度は桜が見事であった。そして、ウカハ(高島郡鵜川)でサルタヒコに出会った時は卯の花が盛りであった」
「それぞれの花を折りかざして愛でたものだが、その花々がわが子の胞衣の模様となって現れたのは何という瑞兆であろうか。だから三人の子にはこれらの花の名前をつけることにしよう」
「第一子はホノアカリと名付け、イミナ(=生涯持ち続ける名前のこと)はムメヒトにしよう。次の子はホノススミのサクラギ、末の子はヒコホホテミのウツキネがいいだろう」
そして一息入れ、やさしい眼差しでアシツヒメを見やりながら、こう言いました。

「ヒメが子を産んでからシロコの桜の花が絶えない。だからヒメはコノハナサクヤヒメと名付けよう」そう、実はコノハナサクヤヒメと名付けたのは夫君のニニキネ様なのでした。
そして、富士山が良く見えるこの地に宮を建てて、末永く住むことになったので、浅間神社の祭神はコノハナサクヤヒメになっています。また、自らの乳で三人の子を育てたため、子安神として、子安神社の祭神にもなっていると思います。
シロコの桜は三重県鈴鹿市に鎮座する比佐豆知神社付近に、白子の不断桜として今も残されています。桜の木の寿命は100~150年と言われているので、都度植え替えられてきたとは思いますが、伝承が今に伝わっていると思われます。

あとがき
実はこのエピソードの更新を心待ちにしておられるお方がいました。ニニキネ様はもちろんのこと、実はアシツヒメも楽しみに待っていて下さっていたようなのです。

機会があったら書きたいと思いますが、アシツヒメには一度浅間社でお会いしています。かなりスピリチュアルな方だと思いました。(竜のエピソードもありますし)
多くの方々に本当のご自身のエピソードを知ってもらえるのが本当に嬉しいというお気持ちが伝わりました。(先日、早速お礼にも来てくださいました)
カグヤマさんやタキコヒメ、それからソサノヲさんは美鈴が参拝した際はいつも優しく、慈しんで下さいます。昔のエピソードを読んで驚くこともありますが、今も参拝者の方々を優しく見守って下さっていることもお伝えしたいと思います。
ニニキネ様は他にも随所でエピソードが見られますし、本当に素敵な方なのです。
ホノアカリ様は長男であったためアマカミには即位しますが、ニニキネ様は灌漑事業により、民を生活をより豊かにしたため、祖父のアマテルカミ(天照大神)からミクサタカラを授けられます。そして、ニニキネ様のお血筋が本流となります。
ニニキネ様のエピソードはまたご紹介したいと思います。それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!
参考図書:秘められた日本古代史:ホツマツタヘ 松本善之助 著