前回のお話の続きになります。
ホホテミ様は、ハデツミさんの分家筋にあたるシガノカミを通じて、ヨトヒメが見つけた釣り針を兄のホノススミ様に届けさせます。

シガノカミとは、九州全域を治めていたカナサキさん(=ハデツミさんの祖父)の分家筋に当たる方です。九州北部を本拠地とし、ニニキネ様・ホホテミ様から農業指導を仰ぎ、九州地方の開拓を実現した方です。
シガノカミはワニフネ(上古代の高速船を指す)に乗って、シノミヤ(滋賀県大津市:天孫神社)にヤマクイさん(一般的に大山咋神と呼ばれる)を招いて、ウカワにおられるホノススミ様のミヤ(現:鵜川 白髭神社)に出向きます。

ヤマクイさんとは、ニニキネ様の意を受けて、京都盆地を開拓した方です。滋賀県大津市坂本に鎮座する日吉大社の祭神になっています。

ホノススミ様にヤマクイさんが伝えます。
「この釣り針は我が君が貴方様からお借りして失くしたものです。私がお持ち致しました。」
ホノススミ様は釣り針を手に取って調べ、「確かにこれは私の釣り針だ」と言いながら、さっさと立ち去ろうとします。
ヤマクイさんは思わず、ホノススミ様の袖を掴み、「マチジ(=これはお粗末な針で、返せとせがむ程、上等な釣り針ではないという意味)」と言います。
それを聞いたホノススミ様は「道理をわきまえず、ののしるとは何事ぞ、弟自ら返しに来るのが道理ではないか!」と叫びます。

ヤマクイさんは続けます。
「お借りした時、糸は既に切れそうでした。新しい糸に取り換えて、弟君に貸すのが筋ではありませんか?謝るのはむしろホノススミ様かと存じます」
怒ったホノススミ様は、船に乗り込んで琵琶湖に漕ぎ出します。

そこで、シガノカミがここぞとばかりに、ハデツミさんから預かった満涸の玉を湖に向かって投げます。すると、湖水はみるみる干上がります。地面が露わになったので、シガノカミが追い船に乗り込みます。
ヤマクイさんもホノススミ様に追いつき、手を引っ張ります。シガノカミが今度は別の玉を湖に投げ込むと、今度は乾いた湖に湖水が満ちて、ホノススミ様は溺れそうになりました。

「助けてくれ!私が悪かった。これからは弟に駒のように従うから!」と言ったのでした。
シガノカミとヤマクイさんはホノススミ様を助け出し、ウカワのミヤで仲直りをしました。
さて、神社の入口に置いてある狛犬の起源はこのホノススミ様が仰った「駒(=馬)になって従う」ことが本来の由来となっています。

神社の狛犬
ホホテミ様とご兄弟のその後
さて、以上がホノススミ様とホホテミ様のエピソードとなります。
では、ニニキネ様のアシツヒメとの間に生まれた3人のお子様のその後を簡単に説明して、終わりにしたいと思います。
長男 ホノアカリ様
ニニキネ様はご自身の長男に、兄上と同じ名前を付けたので、混同しやすいのですが、ニニキネ様の兄がホノアカリ(イミナ:テルヒコ)、長男がホノアカリ(イミナ:ムメヒト)です。

ちなみに上古代で梅はムメと呼ばれていたので、梅の花にちなんでムメヒトと名付けられました。
※お二人のホノアカリ様のお名前を表にまとめました。
ニニキネ様との関係 | 名前 | イミナ | 別名 |
兄 | ホノアカリ | テルヒコ | アスカヲキミ |
長男 | ホノアカリ | ムメヒト | ハラヲキミ ムメヒトヲキミ |
ホノアカリ様は富士南麓のハラミノミヤで政務をとります。叔父のアスカヲキミに世継ぎが出来なかったため、ご自身の長男:クニテルさんがアスカヲキミの養子となり、ニギハヤヒを名乗ります。
このニギハヤヒさんの妃となったのが、フトタマさんの孫にあたるミカシヤという方で、お二人の間に生まれたウマシマチさんの子孫が後の物部氏です。
ムメヒト様の後を継いだのは、ニギハヤヒさんの弟のタケテルさんで、その子孫がヤマトタケさんの時代のオハリムラジ(尾張連)の家系となって続きます。
※ヤマトタケさんの妃ミヤスヒメはこのオハリムラジの娘にあたります。
次男 ホノススミ様
次男のホノススミ様(イミナ:サクラギ)は長生きをしたため、シラヒゲカミの褒め名が与えられました。ホノススミ様の子孫:ウツヒコさんは初代スヘラギ:タケヒト様(神武天皇)に仕えて、ヤマトノクニツコに任じられます。

第十一代アマカミ ホホテミ様
さて、ニニキネ様のお眼鏡にかない、次期アマカミ(上古代の天皇)に選ばれたのは三男のホホテミ様(イミナ:ウツキネ)でした。ハデツミさんのお屋敷で出会ったことがご縁でトヨタマヒメがホホテミ様の妃となります。

以上が、ホノススミ様とホホテミ様のエピソードとなります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
参考図書:ホツマ辞典 池田満氏著/秘められた日本古代史ホツマツタヘ 松本善之助氏著